CES 2024:現地から見たテクノロジーの最前線

Vol.1アジア企業台頭の裏で、日本企業が抱える課題とは

  • 2024年2月
  • エグゼクティブパートナー 和田 安有夢

CES 2024:現地から見たテクノロジーの最前線

Vol.1アジア企業台頭の裏で、日本企業が抱える課題とは

  • 2024年2月
  • エグゼクティブパートナー
    和田 安有夢

 CES2024が幕を開けた。
 「ALL ON」というテーマの下で、AIの民主化とサステナビリティに焦点を当てた中、Digital HealthやVehicle関連の展示では、アジア企業の台頭が目立った。

 

 特にベイカレントが注目しているカテゴリとして、Digital Health/Well-Being、Vehicle Tech(乗用車)、Vehicle Tech(商用車)、Smart Society(公共・自治体)の4テーマを挙げた。現地で直接見聞きし、体験した内容をもとに、それぞれのカテゴリについて、日本企業に対する示唆を連載企画で紹介していく。

 

AIやデジタルヘルス推しの展示、出展数ではアジア企業が台頭

 2024年1月9日~12日の4日間にわたり、米国・ラスベガスで世界最大のテクノロジー見本市「CES 2024」が開催された。CES主催団体である全米民生技術協会(CTA)が100周年目のCES2024は、「ALL ON」というテーマの下で、AIの民主化やサステナビリティをコンセプトに、4,000社の出展、13.5万人以上の来場と、昨年度を上回る規模の開催となった。

 初日の基調講演ではLOREALが、AIを活用した「Beauty Genius *1」や、ハンディキャップや環境に配慮したサステナビリティをコンセプトにBeauty Tech製品を発表するなど、まさに「ALL ON」のテーマに相応しいプレゼンで幕を開けた。

*1)顔の状態を撮影・読み取りし、顔色やしわの状態などから最適な美容商品をレコメンドするアプリ

 

 その他のKeynoteやConference SessionはAIに関連するテーマが最も多く、全体の約2割(53/285)を占めており、次いでDigital Health/Well Beingに関連するテーマが多かった。

 

【Conference Sessionの題材数(全285*件)】

*全285件のうち、上記区分以外のものはグラフから除外。また複数区分による重複カウントあり。

 

 視点を変えて国別で見てみると、開催国である米国の出展数が多いのは予想通りだが、中国、韓国、台湾とアジア企業の台頭が目立つ。特に中国は米国よりも出店数が多く(米国:1,076社、中国1,134社)とトップの出展数である。ただし市場浸透済みの量産製品の展示が多く、新規性に欠けていた。言うならばAmazonのサイトで似たような中国企業の電化製品やガジェットが多数並んでいるのをリアルな展示ブースで眺めているような感覚だ。

 

 中国、米国に次いで、韓国が662社と出展数で3番目に多い。実際の展示を見ても、財閥系メーカーのLG、SAMSUNG、HYUNDAI、ロッテグループなどは、展示エリアが非常に大きく、かつ展示会場の入口正面にブースを構えるなど相当な力の入れようであり、人だかりや入場待ちの行列ができるなど注目度も高かった。財閥系以外でも、Eureka Park(スタートアップ企業の出展が多いエリア)にて、ソウル市やソウル大学など、自治体・大学・経済団体から支援を受けた約370社が出展、他国のスタートアップ企業と比べ、ひと際大きな存在感を放っていた。

 

 フランス(出展数第4位:190社)のスタートアップ企業も韓国に劣らず目立っており、出展企業に話を聞くと、国として医療や社会インフラのIT化が遅れているため、国(ビジネスフランス:政府系機関)の支援を受け、約110社が出展しており、特にヘルステック、次いでグリーンテックなど、具体的な社会課題を解決するための新規ソリューションの展示に力を入れているとのこと。中国や韓国は実製品の機能や見た目、バリエーションをアピールしている傾向だが、フランス企業は「いかに社会的意義のある製品か」を出展者が説明することを重視し、実製品の展示がないブースも散見された。

 

 そんな中、日本の出展数は67社(第8位)と中国や韓国と比べると大きく溝を開けられ、出展企業の内訳は大手が10社強とスタートアップが50社程度の割合となっていた。

 

【出展企業数(約4,000社)】

 

自社ブランドイメージの刷新を狙った日本企業

 日本で出展している企業をいくつか紹介したい。

 Sonyの「AFEELA」やHondaのEVコンセプトカー「Honda 0」を発表するなど近未来型のモデルは目立っており、人だかりはできていたものの正直言って昨年度からの大きな変化・驚きは感じられなかった。逆にENEOSやNikonは既存事業からのイメージ刷新を狙った印象の展示で目を引いた。

 

 そんな中Panasonicは、いわゆる自社の新製品中心の展示ではなく、グループ新中長期戦略に照らしてサステナビリティに資する取り組みを発信する機会としてCESを活用しており、クリーエネルギーやリサイクル/リユースによる排出量削減への取り組み紹介が中心であった。展示の説明プレートもプラスチック製ではなく段ボールを利用するといった徹底ぶりで、会社としてのコミットメントが伺え、非常に好感を持てた。

 

 また、スタートアップの出展はJAPAN TECH PROJECT(CREATIVE VISIONと大阪商工会議所が協賛)エリアに22社と、J-Startup/JAPANパビリオン(JETROが協賛)エリアに30社が、実用化に向けた提携先企業の探索や、海外販路拡大を目的に出展していた。中国や韓国と比べ数は少ないが、まとまったエリア出展していることで、認知されていない基礎技術の高さをアピールする場として、日本だけでなく海外の参加者からも注目を集めていた。一方で、各出展企業の製品・技術カテゴリや粒度感が非常に雑多なため、韓国企業のようにカテゴリ単位でまとまって展示することで、よりインパクトを出せるのではと感じた。

 

ベイカレントが注目する技術カテゴリとトレンド

 CESの公式サイト「CES Show Categories for Exhibitors」にて18の技術カテゴリが定義されているが、我々が展示会を見た限りでは、Digital Health/Well-Being、Mobility、Smart Society、Robotic、Metaverse/XRの5カテゴリが出展数も多く目立っていた印象だ。

 

 AI・サステナビリティについては、CES 2024の全体テーマ「ALL ON」の共通カテゴリとなっていることも勿論だが、生成AIの普及やESG/SDGs等の社会課題に対する取り組みとして、様々な製品やサービス、企業コンセプトという形で表れていた。

 本連載企画では、ベイカレントが特に注目する4つのテーマ(Digital Health/Well-Being, Vehicle Tech(乗用車), Vehicle Tech(商用車), Smart Society(公共・自治体))について深堀っていく。

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