米国MFN薬価政策の動向と日本に求められる対応
2026年9月
チーフエキスパート
山口 卓也
米国トランプ政権は、自国の薬剤費抑制を目的に最恵国待遇(MFN)薬価政策を推進している。他の先進諸国の薬価水準(1人あたりGDP補正後)を参照し、より低い国の水準に米国の薬価を引き下げる政策であり、具体的な価格調整手法も示されている。日本は参照国に含まれる一方、その薬価は先進国の中でも低水準にある。各国が参照リスクへの対応を進めるなか、制度改革が進まなければ日本の薬価がMFN参照価格の最低水準となり、ドラッグラグ・ロスの再燃が懸念される。本稿では、MFNの政策構造と各国対応を整理したうえで、次期薬価制度改革に向けた日本の打ち手を論じる。
MFN政策の概要
最恵国待遇(MFN: Most Favored Nation)はもともとWTO協定の中核原則である。いずれかの国に与える最も有利な待遇を、全ての加盟国に平等に適用するという貿易秩序の根幹をなす概念である。トランプ政権はこの原則を薬価政策に転用し、「他国が享受している最も低い薬価を米国にも適用する」ことを目指している。米政権は、製薬企業が先進国市場において高薬価を米国に設定し、その分を欧州・日本などで低く設定している構造にあるとの認識に立ち、これを「不公正」とみなして、米国の公的医療保険における薬剤費を削減することを目的としている。
MFN政策における参照価格は、…
全文はPDFをダウンロードしてご覧ください。
資料ダウンロードPDF(1.87 MB)