ステーブルコインをめぐる国際規制動向と日本法への示唆~米国GENIUS法およびEU・MiCA規則を踏まえた信託型電子決済手段の法的・実務的課題~ 前編
序論
まずステーブルコインをめぐる国際的な規制動向を整理する。日本では、2023 年6 月1 日に施行された「改正資金決済法」において、法定通貨を裏付けとするステーブルコインが「電子決済手段」として定義され、国内での発行・流通が可能になった。*1 これにより日本は、世界に先駆けてステーブルコインを法律で明確に定義した国となった。一方海外に目を向けると、EU では、2024 年6 月30 日に適用された「Market in Crypto Asset(Title III & IV)」( 以下MiCA)において、ステーブルコインの発行体はEUのライセンスを取得し、厳格な準備金や償還リスクの管理が求められるようになった。*2 そして米国では、2025 年7 月18 日にGENIUS 法が成立し、ようやくステーブルコインとその発行者に対して厳格かつ明確な連邦レベルのライセンス及び監督の仕組みが構築された。*3
次に、日本の実業界における最近の主な動向を整理する。2025 年3 月4 日、SBI VC トレードは日本初の「電子決済手段等取引業者」として金融庁に登録され、USDC(外国電子決済手段)が日本で初めて上場するステーブルコインとして取り扱い可能となった。*4 さらに、2025 年8 月18 日にはJPYC 社が「資金移動業者」として登録され、日本初の日本円建てステーブルコインの発行が可能となった。*5 もっとも、SBI VCトレードが取り扱うUSDC は、監督指針等に基づき「移転1 回あたり100 万円」「事業者が管理する額は1人あたり100 万円」等の上限が適用され、同社は売・出庫で「1 回100 万円」の上限を設けている。またJPYC(第二種資金移動業)の発行・償還は制度上「1 日あたり100 万円」の制限がある。*6 海外で流通するUSDT*7 やUSDC*8 のように、発行・償還に制限が設けられていないステーブルコインは、日本では未だ存在しない。将来的には、銀行・信託銀行・信託会社が発行するステーブルコインであれば、この100 万円の制限を受けない可能性がある。
なお、日本の実業界の動向を語るうえでProgmatにも触れておく必要があるだろう。これは、三菱UFJ信託銀行を筆頭株主とする共同事業体Progmat 社が運営するデジタルアセット基盤である。このうち……
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