GIGAスクール構想がもたらす価値

  • 2022年2月
  • エグゼクティブパートナー 澤村 達志

GIGAスクール構想がもたらす価値

  • 2022年2月
  • エグゼクティブパートナー 澤村 達志

GIGAスクール構想にもとづき、全国小中学校の児童・生徒に1人1台のデジタルデバイスが概ね行き渡っている。生徒と家庭、教育機関がつながる地域のデジタルインフラが整ったという点では、教育変革のみならず、政府が掲げるデータ駆動型社会「Society5.0」実現にも寄与する確かな一歩である。
社会課題解決や産業発展も示唆される新たな社会基盤の価値について展望したい。

GIGAスクール構想の背景と現在の状況

 政府が野心的な目標を掲げ、自ら先陣を切り投資する施策は、時に経済・社会を非連続的に変化させる。今日における脱炭素の取り組みは、その代表といえる。まだ記憶に新しい「カーボンニュートラル宣言」には、2050 年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにするというドラスティックな目標が設定されている。加えて政府自ら、グリーンイノベーション基金事業を設け、民間企業が次々と研究開発や設備投資を始める呼び水となった。この動きは、日本に対する世界からの認識を大きく変えた。

 

 GIGAスクール構想も同じく、野心的な目標に基づく政府投資が行われている。2019年12月13日、令和元年度の補正予算案が閣議決定され、「GIGAスクール構想の実現」に2,318億円が計上された。これにより、2023年度までに、小中学校の児童・生徒にタブレット端末が配備され、児童・生徒たちの出欠管理や成績処理などを手助けする校務支援システムを導入することで、教師たちの働き方改革が加速する見込みだ。

 

 タブレット端末だけを配ってもネットワークがつながらなければ意味がない。そこで、GIGAスクール構想では、学校内に高速大容量の通信ネットワークシステムも一体的に整備、ICT環境を整えていく。(図1)

 

 

 

「Society5.0」に向け、あぶり出される教育分野の課題

 構想の背景には、「Society5.0」の到来に向けて学校教育の変革だけが後れをとるのではないかとの懸念があるようにも見える。「Society5.0」は新しい価値やサービスが創出され、人々に豊かさをもたらす新たな社会であり、無論、教育もその例外ではない。

 

 経済協力開発機構(OECD)が15歳を対象に3年ごとに実施している国際的な学習到達度調査(PISA)を見れば、日本の学校教育に対する懸念の片鱗が見えるであろう。(図2)日本はアジア諸国(中国、シンガポールなど)から後れを取っているだけでなく、3分野(読解・数学・科学)全てにおいて、学力が低下傾向にあることが分かる。次に、学校内外でのデジタル機器の利用についての調査結果を見ると、デジタル機器の利用についてはOECD諸国と比較しても、国際的に劣後していることがわかる。さらに、日本の子どもの学校外でのデジタル機器の利用については、動画共有アプリのYouTubeやTikTokなど「学習外」、すなわち遊びに比重が置かれている状況だ。

 

 

コロナ禍で邁進した教育におけるICT 環境整備

 あらためて、GIGAスクールが目指すものをもう一歩踏み込んで考えてみたい。そもそもの狙いは、1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化し、資質・能力を一層確実に育成できる教育環境を実現することである。

 

 これまでの日本の教育と最先端技術のベストミックスを図ることにより、教師、児童・生徒の力を最大限に引き出すことも目指している。また、……

 

 

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