COP29から見る 日本企業が採るべき戦略 ~ネイチャーポジティブ経営の要諦~

世界の環境取り組みへの羅針盤 COPを通じて今後を見通す
毎年開催される COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)。これは、国連気候変動枠組条約の参加国が気候変動に対処すべく、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標や対策方針、気候変動による被害を受けている国々への支援など、様々な議題を協議するグローバルな会議である。まさに世界の環境政策の方向性を決定づける、「羅針盤」となる場であるといえる。2024 年 11 月 11 ~ 24 日(2 日延長)に、アゼルバイジャン共和国のバクーで開催された COP29 の議論を振り返りながら、日本企業が取るべき今後の戦略を考察する。
COP29 の直前、トランプ氏の米大統領再選が確定した。そのため、COP29 では、米国関係者の言動に注目が集まっていた。それは、トランプ氏が第 1 期政権(2017 年 1 月 20 日正午~ 2021 年 1 月 20 日正午)時にパリ協定から離脱した経緯があり、気候変動対策に関連する政策を推進してきたバイデン政権(2021 年 1 月 20 日正午~ 2025 年 1 月 20 日正午)の方針から第 2 期目となる 2025 年以降も大きく転換すると予測されていたためである。実際、トランプ氏は 2025 年 1 月 20 日の大統領就任直後に、パリ協定からの離脱を定めた大統領令に署名し、バイデン政権の政策に決別して新たな政策へと舵を切ることが決定的となった。果たして、トランプ政権下において米国市場での気候変動ビジネスにはどのような影響があるのか、また米国で事業展開する日本企業はどのように立ち振る舞うべきなのか。
また、COP29 での議論は、米国の動向のみに限るわけではない。各国や国際機関のブースでは、脱炭素技術、カーボンニュートラルに向けた人の移動、都市開発のあり方など、取り扱われるテーマは多岐にわたった。その中でも、世界の関心の高まりを特に強く感じたのが、脱炭素の次のテーマと称される「ネイチャーポジティブ」である。脱炭素化はすでに前提条件となり、今後は中長期的にいかにネイチャーポジティブへ移行するのかについて議論されていた。世界は早々にネイチャーポジティブへの移行を進めており、日本企業もネイチャーポジティブ経営への転換が求められる局面にある。
本稿では、COP29 の視察をもとに、ネイチャーポジティブ戦略に対する日本企業の対応について提言する。
今、ネイチャーポジティブが経営で重要視される理由
ネイチャーポジティブとは、環境省の定義によれば......
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