新たな決済体験の可能性 - 日米BNPLトレンド比較を通じて -

エグゼクティブパートナー 和田 安有夢
米国を中心にトレンドが生まれ、日本にも波及したBNPL(Buy Now Pay Later:後払い決済サービス)。 国内におけるプレイヤーの動向や利用者の特徴は米国のそれらとは異なった傾向が見られる。 海外では規制強化など波風が立つ中、日本におけるBNPLの伸びしろと既存プレイヤーとの共生について考察する。決済から広がる顧客体験の向上をWin-Winの座組で実現することが鍵となる。

国内外のトレンドで振り返るBNPLの勃興から現在

 前稿『後払いの新形態「BNPL」とこれからの消費・決済』(2022年6月掲載)では、BNPLの概要と将来予測について論じた。半年以上が経過した今、この新たな決済形態が単なるブームとして過ぎるのか、日本国内における決済手段として定着するのか、海外動向や加盟店・利用者ニーズを踏まえ、主要プレイヤーたちの思惑や見立てについて探ってみたい。

 簡単に前稿のおさらいをする。
 BNPLとはBuy Now Pay Later(今買って、後で払う)の略称である。後払いの代表であるクレジットカードと大きく異なるのは、事前審査が不要な点である。国内にはネットプロテクションズやPaidyなど専業事業者や、PayPayやGMOペイメントゲートウェイのような決済事業者など多くのプレイヤーが現れている。海外でもKlarna(クラーナ)、affirm(アファーム)、afterpay(アフターペイ)など専業事業者が乱立している状況だ。それらの動向をおさえた上で、前稿では特にZ世代と言われる若年層の購買行動に着目し、将来の決済チャネルの変化を予測した。結論として、BNPLが一定のシェア(10%程度)を確保するものの、引き続きクレジットカードやスマホ決済のシェアや優位性は大きく変わらないであろうとした。


 では前稿からの市場の変化について、Googleトレンドを通して見てみよう。グローバル(世界)と国内でやや傾向が異なる。
 まずグローバルからだ。「BNPL」というワードが検索され始めたのは2021年8月頃で、トレンドとして見聞きする機会が増えた時期と重なる。BNPL自体は2000年代に入ってeコマースと並んで発展してきた手法だが、コロナ禍において巣ごもり需要の高まりとともにオンライン決済の利用が急増(コロナ禍前の2019年と比較し1.6倍強)したことで話題に上がった。これに伴って、海外のBNPLプレイヤーたちの資産価値も急上昇している。もう1つグローバルで注目すべきトレンドがある。2022年6月頃の急上昇である。これは同時期における既存主要プレイヤーの急落が要因と考えられる。この年、支払い遅延増加等を背景に各国にBNPLへの規制強化の動きが広まった。加えて、Appleが独自BNPLサービスを提供するという異業種ビッグネームの参入が騒がれた。このような背景の中、Klarnaはレイオフ実施やダウンラウンド、affirmは株価暴落といった急降下を招いてしまったのだ。


 一方、国内では、初回の上昇タイミング(2021年8月頃)はグローバル同様だが、その後、大きな変化は見られない。
 ただし、市場プレイヤーまで解像度を上げると、市場課題・ニーズなどを鋭く捉えた“新たな切り口”によるBNPLサービスの後発参入が見受けられる。


 3社ほど例を挙げよう。……

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