ASEAN市場の牙城を崩す 中国自動車メーカー 日本メーカーが採るべき戦略とは?

中国メーカーが海外市場に積極展開、裏にはそうせざるを得ない理由が
以前の中国自動車市場は、現地に開発・生産の拠点を置き何十年にもわたってビジネスを育成してきた日米欧のメーカーが大きなシェアをもっていた。ところが現在の勢力図は一変している。
欧米の自動車メーカーを見ると、2024 年に米General Motors が中国での業績不振による工場閉鎖などで最大 56 億米ドル(約 8400 億円)の特別損失を計上。独 Volkswagen も中国市場における 2024年の販売台数は 2021 年比で 4 分の 1 以上も減少してしまった。日本メーカーも例外ではない。トヨタ動車の販売台数は 2023 年比で 7.7% 減、ホンダに至っては同 30.7% 減の苦境に陥っている。
その一方、国内市場で成長した中国メーカー各社は、その余勢を駆り国外の市場へ積極的に展開している。中国メーカーの完成車輸出は、2023 年の時点で日本を抜いて世界一を達成しており、2024 年以降も輸出台数で前年比 23.8% 増と破竹の勢いだ。(図 1)
同市場のトップメーカーである比亜迪(BYD)は、世界 88 の国と地域に向けて EV を含む新エネルギー車(NEV)を展開し、2024 年 8 月時点での累計輸出台数 51 万台超に達している。同社に続く吉利汽車、上海蔚来汽車(NIO)、長城汽車といった 2 番手グループも軒並み海外における生産拠点や販売拠点の設置を積極的に推し進めている。
こうした中国メーカー各社の海外展開に、実は必然的な理由があることはあまり知られていない。思われているほど各社に高揚感があるわけではなく、むしろ将来のビジネス展開に危機感さえ感じているのである。
最大の理由は、積極的な設備投資を続けたことで過剰な生産能力が顕在化し、中国国内の需要だけでは稼働率が上がらなくなってきていることである。中国内需の伸びは鈍ってきており、2023 年は前年比 6.0%増にとどまっている。特に過剰な生産能力が目立つEV は、2023 年時点で年間 1346 万台の生産能力に対し 57% の稼働率と停滞している。こうした過剰な生産能力は部品レベルでも見られ、リチウムイオン電池の生産能力は国内需要の 3.3 倍、世界需要の 1.5 倍に達するとみられている。
加えて、中国国内市場では BYD 一強の構図が現出しており、他社は生き残りを賭けて海外市場に活路を拓く必要性が生じている。中国市場における BYD の......

全文はPDFをダウンロードしてご覧ください。
資料ダウンロード PDF(1,015.44 KB)