ASEAN市場の牙城を崩す 中国自動車メーカー 日本メーカーが採るべき戦略とは?

2025年3月 チーフエキスパート 若林 哲
中国の自動車メーカーが電気自動車(EV)分野で技術開発とビジネス展開の両面で世界をリードしつつある。既に世界最大級の中国国内市場では海外メーカーが劣勢に立たされ、これまで長年日本の牙城であったASEAN市場でも中国勢が攻勢を強める。日本のメーカーはどう対策すべきか。EV過当競争の中で、日本企業が生き残る術を探る。

中国メーカーが海外市場に積極展開、裏にはそうせざるを得ない理由が

 以前の中国自動車市場は、現地に開発・生産の拠点を置き何十年にもわたってビジネスを育成してきた日米欧のメーカーが大きなシェアをもっていた。ところが現在の勢力図は一変している。


 欧米の自動車メーカーを見ると、2024 年に米General Motors が中国での業績不振による工場閉鎖などで最大 56 億米ドル(約 8400 億円)の特別損失を計上。独 Volkswagen も中国市場における 2024年の販売台数は 2021 年比で 4 分の 1 以上も減少してしまった。日本メーカーも例外ではない。トヨタ自動車の販売台数は 2023 年比で 7.7% 減、ホンダに至っては同 30.7% 減の苦境に陥っている。


 その一方、国内市場で成長した中国メーカー各社は、その余勢を駆り国外の市場へ積極的に展開している。中国メーカーの完成車輸出は、2023 年の時点で日本を抜いて世界一を達成しており、2024 年以降も輸出台数で前年比 23.8% 増と破竹の勢いだ。(図 1)


 同市場のトップメーカーである比亜迪(BYD)は、世界 88 の国と地域に向けて EV を含む新エネルギー車(NEV)を展開し、2024 年 8 月時点での累計輸出台数 51 万台超に達している。同社に続く吉利汽車、上海蔚来汽車(NIO)、長城汽車といった 2 番手グループも軒並み海外における生産拠点や販売拠点の設置を積極的に推し進めている。


 こうした中国メーカー各社の海外展開に、実は必然的な理由があることはあまり知られていない。思われているほど各社に高揚感があるわけではなく、むしろ将来のビジネス展開に危機感さえ感じているのである。

 最大の理由は……

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