自動車ソフトウエア主体化に伴う チェンジマネジメント

エグゼクティブパートナー 嶋津 将樹
自動車の主要機能をソフトウエアによって定義・実装する「SDV」が、Teslaや中国メーカーが先導するかたちで市場投入されるようになった。SDV時代の自動車ビジネスでは、ソフトウエア開発の重要性増大といった技術面での変化に目が向きがちだ。しかし、自動車メーカーの競争力を高めるために、SDVの特性を深く洞察し新たな組織体制改革など技術以外の課題に目を向ける必要がある。

“スマホ化”で変貌する自動車ビジネス

 「CASE ※ 1 トレンド」に沿った自動車の技術・ビジ ネスの革新に伴って、「ソフトウエア定義車両 (Software Defined Vehicle:SDV)」と呼ばれる 新たなクルマのあり方に注目が集まっている。SDV とは、クルマに搭載する機能の多くを、ソフトウエア によって定義・実装する自動車システムのことを指す。 スマートフォンに似たシステム構成と利用法をクルマに適用したものと考えれば想像しやすいかもしれない。


  2007 年に Apple が市場投入した「iPhone」は、これまで外出先での通話こそが最重要機能だった携帯電話機を、SNS や動画の視聴、情報検索、電子決済など、様々な用途に活用するデジタル端末へと進化させた。 今では、世界中の誰もが肌身離さず持ち歩く必需品となった。SDV への進化によって、自動車業界でも同様のイノベーションが起きようとしている。


 SDV によって変わるのは、クルマという工業製品 そのものだけではない。業界構造やビジネスモデルを含めて、現在とは大きく異なったものになっていくだろう。これは、かつて通信事業者がトレンドセッターとして君臨していた携帯電話業界で、「iPhone」登場以降、多種多様なアプリやコミュニティ、コンテンツ などの事業者にも価値ある成長市場が切り拓かれたことからも想像できる。


  既存の自動車メーカーやサプライヤー、アフターサービスの事業者などは、SDV 時代の到来を見据え、ビジネスモデルや組織体制、経営リソースの配分、さらには企業文化や働く人のマインドまでを再定義し、適応する必要性に迫られている。単に SDV に対応する技術や製品を開発・提供するだけでは、来たる時代 を勝ち残ることはできないからだ。

常時アップデートされるクルマの誕生

 これまでにも、自動車に搭載する様々な機構を機能させるためにソフトウエアが利用されてきた。その種類や数、規模は、今も増え続けている。では、SDV に搭載されるソフトウエアは、これまで開発・ 搭載されてきたものと何が違うのだろうか。 従来、クルマの機能を動かすために利用してきたソフトウエアは……

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